2021/12/13

2021年 天皇杯準決勝 川崎戦

【川崎1 - 1 大分(PK 4 - 5)】


とんでもない試合を生観戦してきました!伝説に残るような1戦となった2021年天皇杯準決勝。Jリーグ史上最強と謳われる王者川崎を相手に、J2に降格が決まっているトリニータが如何にしてこの結果を導き出したのか。見どころが多すぎて全部書けないくらいの情報量。とにかく良い試合だった。両軍が褒め称えられるべき素晴らしい試合。この試合を観に行った人、孫の代まで自慢して良い。戦術的にもストーリーとしても面白かった!今シーズンのベストゲーム。リーグ戦の反則ポイントがダントツで少ない川崎と2位のトリニータの試合は純度100%で濃かった。



まずはこれまで各方面で辛抱して来た観客動員の上限が、試験的という条件付きではありますが遂に、遂に、撤廃となりました。いやー、長かったですねぇ・・・。まだ試験的とは言え、ようやく通常のスタジアムの風景を取り戻すことが出来ました。真面目に声を出さずに応援を続けた全サポーターが報われる日が来ました。この試合もまだ声は出せませんでしたが、最後の最後、展開的にどちらのサポーターからも声が出てしまっていたけども。




とにかく大きな前進です。これまでJリーグが中心となって計画して来た最後の成果をJFA、日本サッカー協会側の、田嶋会長の手柄に取られたような気もしなくもないのだけれども、これで感染が広がらなければ来年のJリーグは通常イベントとして元に戻せるのではないでしょうか。本当に大きな一歩になると思います。田嶋会長のことは好きになれませんが、やはりスタジアムは満員の方が良い。この久々の条件が試合に対する熱を帯びさせる要素の一つになったことは間違い無かった。




既婚者と未婚者。カブが結婚するなんて予想外過ぎるストーリーを作り出した川崎の広報は相変わらず頭がおかしい(※誉め言葉)。この日は12月12日、我が軍が誇る癒し系マスコットニータンの誕生日であった。残念ながら本体をスタジアムには連れて来れませんでしたが、巨大なぬいぐるみを持参したがる性癖の人が本日も率先して身代わりニータンを連れて来て穴埋め。ニータン永遠の5歳。誕生日おめでとう。


リーグ戦とは違い、勝たなければならない一発勝負のトーナメント。負けない試合さえすればPK戦にまで持ち込めるためジャイアントキリングと呼ばれる番狂わせが発生しやすい。トリニータとしては守備ブロックを形成して我慢に我慢を重ねる対策をするのが王道だけれども、リーグ戦での川崎戦ではいずれも辛抱できずに失点して屈している。守り切るには策が必要なはずで、この対川崎戦の策をどのように準備するのか、大変楽しみにしていたのでありますが予想の上を行きました。



スタメンが発表された時点では並びは分からず。まずはこれまで積み重ねてきた3-4-2-1をベースに考えるじゃないですか、普通は。この体制の集大成として臨んでいる一戦で、自分たちの形をまずは考えるはず。しかし、リーグ戦ではけちょんけちょんで手も足も出せなかったので天皇杯準決勝では奇襲に出た。試合開始直後に判明した並びは4バック。中盤がダイヤモンド気味だけれども、4-4-2というよりは4-3-3に近い形で川崎に対してミラーゲームに近い形に持ち込むような並びになっていた。完全なミラーじゃないけれども、近い形。ペレイラとエンリケの2CBに左に三竿、右に小出を配し、アンカーに小林裕紀、その左右に内側に絞り気味で町田と渡邉新太が陣取り、トップ下に下田で小林成豪と伊佐のツートップという形で守備体形を作った。6年間の片野坂体制で初の陣容な気が。ここに来て勝利のために新しい策を準備してくる監督コーチ陣。J3から這い上がった漢達の最後の仕上げ仕事だった訳です!この陣容にはプレスでハメてショートカウンターという意図と、もうひとつの川崎側の事情を、唯一突破できる穴を作るための執拗な攻撃の意図があったように感じた。良い所と悪い所がある戦術をギリギリ運用し切っての戦いであった。

対する王者川崎のメンバー。我が軍はシーズン開始前に主力が流出したのが降格の要因だと言われていますが、川崎も主力をシーズン中に海外のクラブにバカスカ引き抜かれている。それでも優勝出来るんだから主力が抜けたことを言い訳には出来ません。選手層が違っていてもだ!言い訳すんな!川崎はその上でジェジエウが35節鳥栖戦で大怪我を負ってしまい帰国中。リーグ戦で相まみえた時は攻撃という攻撃をジェジエウに滅せられたトリニータにとって、代わりに入った28番山村が相手であればワンチャンあるんじゃないのか大作戦。というか、それ以外にリーグ戦で28失点しかしていない強固な川崎の守備を破る策が思いつかない、消去法的な攻撃策。実際山村は穴どころか逆手にとって得点を狙うくらいの出来だったので普通以上の守備強度は保っていた。川崎の守備を破るには体力尽して何度も叩いて割るしかない。今シーズンを制覇した鉄壁の4-3-3。頂点にはめちゃくちゃ守備を頑張る得点王レアンドロダミアン。2021Jリーグベストイレブンだらけのスタメンと対峙。





最初の見どころは奇襲となった試合の入り。川崎が混乱するほどではなかったにしろ、プレスはハマり、上々の滑り出しとなった。最初から引いて守るでは耐えられないからこそ選んだ攻撃的な手でありながら、ペレイラとエンリケ二人がかりでレアンドロダミアンを封殺する必要がある守備のリスクも負わなければならなかった。それでも抑えられない決定機には高木が立ちはだかった。トリニータの攻撃は小林成豪が山村に積極的に1対1を仕掛け続ける、対山村1点突破。しかし山村は決して穴では無いのよ。しっかりとした対応を続けられてしまった。理想は早い時間の先制だっただろうけれども、川崎が見せた柔軟性というか、戦術に対する対応力みたいなものの凄みも見せつけられて15分を過ぎたあたりでプレスに対するポジショニングを修正された感じであった。プレスが剥がされるようになるまで時間はかからなかった。しかしこの15分が重要であった。全員が元気な状態の前半を無失点で凌げたことが大きかった。相変わらず自由過ぎるポジショニングの家長からボールが奪えない。厄介な男すぎる。


後半もペレイラとエンリケで何とか川崎の攻撃を凌ぎ続けた。先に動いたのは川崎。怪我上がりの大島には無理をさせず、マルシーニョを交代投入。トリニータも前線から異常なプレスを続けた伊佐と小林成豪に限界が来たため、松本怜と井上健太を投入。ここが戦術2つ目の見どころ、スピードでひっくり返す策。これは予想出来ていました。最前線に井上健太を投入して「戦術:井上健太」は使うだろうと。Jリーグ屈指の俊足を誇りながら結果を出せなかったのでまだあまり知られていない井上健太はワンチャンあると。実際、チョンソンリョンからボールを奪って下田に繋げた場面は狙いがハマった。ただ、前がかりになりっぱなしになった川崎に裏のスペースはあれども、即時奪還の寄せが速すぎて井上健太を活かせるような正確なボールを出せる場面が少なかった。80分過ぎ、レアンドロダミアンと旗手が下がり、小林悠と知念が交代で入った。レアンドロダミアンに得点を許さなかった2センターバックと高木はこの時点で賞賛に値する。もうダメかと思ったピンチが何度もあったけれども、好セーブでピンチを救い続けてくれた高木が今日は凄すぎた。獅子奮迅の活躍でした。90分を無失点で終えた。今シーズン、等々力競技場ではリーグ戦で勝てたチームはいない。2敗しかしていない川崎は福岡と鳥栖で負けている。本拠地で川崎を倒せたチームは無いのだ。その相手に90分で無失点はほぼ勝利に値する。しかしこれは天皇杯。延長戦へと入って、「もしかすると」という雰囲気はスタジアムに出始めた。打っても打っても今日は入らない、そんな雰囲気になりつつあった。



アクシデントは延長前半、ここまで完璧な守備を遂行してくれていたペレイラが痛んで坂と負傷交代。守備の要を失ってしまった。延長後半に入ってから、何が起きてもおかしくないPK戦だけは避けたい川崎。勝負に出た鬼木監督、3枚替えを敢行。家長、橘田、脇坂を下げて小塚、遠野、塚川を投入。この交代が当たる。右サイド裏を抜けた小塚が必死でクロスを送ると小林悠に押し込まれて遂に失点。ここまで耐えに耐えた守備陣が遂に破られて万事休す。小塚さん、そんなに必死にアシストするタイプじゃなかったと思うのだけれども、川崎だと120%でプレーしないと出場できないらしい。我が軍でも120%でやって欲しかったです。卒業生の素晴らしいアシストであった。


川崎相手に延長後半に先制されてしまい、さすがにもう厳しいと思っていましたよ、私も。しかし、我が軍は3つ目の戦術、羽田をセンターバックに入れてエンリケを最前線に送り出してのパワープレーという最後の手段を準備していました。これまでパワープレーが形になったことはほとんど無かったけれども、この瞬間は遠野が痛んでピッチ外に出ており川崎は10人となっていた。右サイドでスローインから時間を作れたトリニータ。フリーで下田が受けるとクロス一閃。最前線でFWに転職したばかりのエンリケのヘディングにドンピシャ。この時、エンリケについていたマークは28番の山村。前半から何度も叩き続けた1点突破が結実。前半から仕掛けに仕掛けて疲弊させて、攻撃陣全員の蓄積、120分を過ぎてやっと攻略できた。山村、決して穴じゃありません。川崎からの卒業生、下田のクロスが素晴らしかった。お互いの古巣相手にアシストした元所属選手達の巡り合わせ。





延長後半に試合を振り出しに戻す劇的ゴール。これで王者川崎をPK戦に引き摺り出すことに成功。失うものは何もない我が軍、大当たりのGK高木。行ける雰囲気は出来た。


シーズンスローガンにふさわしい一致団結っぷりだったPK前の円陣。スローガンだけは間違わない大分FC。PK戦は高木には不安は無いものの、キッカーには不安だらけ。それは川崎も同じで、交代枠を使い切る激闘の末のPK戦なので頼りになる主力は不在。お互いにその中でメンバーに託す。 珍しくゴール裏を煽る監督であった。





1本目、先行トリニータは下田が決める。川崎は知念が決める。 

2本目、長沢がポストに当てて外してしまう大ピンチ。山村のキックは高木が止める。 

3本目、松本怜が左上に決める。ドキッとさせるベテランめ。川崎は小塚が決めた。 

4本目、エンリケが決める。塚川がポストに当ててトリニータ先行。 

5本目、決めれば勝利のプレッシャー。置きにいった小林裕紀のキックはソンリョンに止められた。小林悠は決めてサドンデスへ。小林対決でした。 

6本目、三竿が決める。川崎キャプテン谷口も決める。 

7本目、大エース町田也真人が当然の如く決める。大エースだからな。川崎は日本代表山根のキックを高木が右手で止める。キーパーの動きを観てから逆を蹴ったはずの山根、真ん中に蹴ってしまった。この試合、高木の右手には神が宿っていた。全員が駆け寄るも勝利したことに気付いていない高木。PK戦のルールを忘れるキーパーなんかいるのか。集中してゾーンに入り過ぎていた模様。VARチェックを経てゴール認定。大分トリニータ、初めての天皇杯決勝に進出。













10回戦ったら9回以上は負けそうな川崎相手に一発勝負で何度も追い込まれながら跳ね返した試合でした。土俵際まで追い込まれながらうっちゃった。プロ選手の中でも天皇杯の決勝でプレーできる人はほんの一握り。遂に夢の舞台に辿り着いてしまった。






今年の天皇杯は組み合わせからして、天皇杯側から近づいて来ているくらいの巡り合わせを感じていた。夢の国立競技場、天皇杯決勝。クラブ創設から20年以上を経て、初めての舞台。これは行くしかありません。色々な理由を付けて行かない言い訳を作り出して自分を納得させて、次の20年後のチャンスまで後悔するよりも行くしかありません。あなたの職場は、家族は、あなたが1日居ないだけで崩壊しません。崩壊したとしても気にするな。行くぞ国立。チケットが無いとか移動手段が無いとか気にするな。東京に向かえ、何とかなる。120分以上の戦いでペレイラも怪我をし、井上健太も負傷していてチームは満身創痍だけれども大丈夫、高木とエンリケと下田と町田と伊佐が元気なら何とかなる。リーチ一発国立無敗。俺たちはもう勝っている!



2 件のコメント:

  1. 感動しかなかったです
    同点になった時は嗚咽が止まらず

    サポーターを煽る監督
    全力でプレスしチェイスする選手

    ゲームもほとんど反則もなく(?)一生自慢できる試合でしたね。
    『また来週』って今週も言える幸せを感じながら帰宅しました

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    1. 自転車最高様

      コメントありがとうございます。
      素晴らしい試合でしたねぇ・・・。
      獲りましょう、有終の美を飾るチームを観に行きましょう。



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