2021/12/20

2021年 天皇杯決勝 浦和戦

【浦和 2 - 1 大分】


夢の舞台。今まで自分が応援するクラブが天皇杯の決勝に勝ち残ることを何度想像しただろうか。何度妄想しただろうか。初めてその栄誉を勝ち取ってくれた大分トリニータが、新しくなった国立競技場に連れて行ってくれました。結果は残念でしたがすこぶる幸せな時間でした。


国立無敗神話を信じ切っていたが故に、前日の夜に先にささやかな祝勝会を済ませておくくらいには勝つつもりでいました。えぇ、私もう勝ったと思っていたのですこぶる冷静に観戦。カップを掲げるところまで想像できていたので録画済みの映像を観るくらいの感じ。



2008年、もう13年前になりますがナビスコカップ決勝で初めてのタイトルを獲った想いでの地、その時に一緒に観戦した親友を再び誘ってゲン担ぎ。昔の思い出を話しながら、色々と感傷に浸っていました。あの後の経営問題、J2降格、プレーオフで再び国立競技場経由でJ1に戻ったこと、J3に落ちたこと。クラブが無くなってしまうかもしれないというところまで経験したクラブが、J3を経て再び3大タイトルが手に届くところまで戻って来れた。その過程をずっと見て来たけれども、友達と話しながら、ふと冷静に振り返って考えると本当に夢のような話。現役の全サッカー選手が出場できる可能性を持つ夢のある、伝統ある大会天皇杯決勝。あらためて素晴らしいと思いました。


決勝の相手は浦和レッズ。長年チームを支えたレジェンド阿部勇樹の引退に加え、槙野・宇賀神がチームを去ることになり、1試合でも長く試合をしようと団結して勝ち上がって来た。片野坂体制最後の試合としてまとまる大分トリニータと浦和レッズ。2021年最後の戦い。素晴らしいストーリー、素晴らしいピッチ、素晴らしい天気、素晴らしい環境。日本サッカーの頂点を決める頂上決戦にふさわしい雰囲気でした。それは間違いなく色々な人たちの尽力でほぼ満員の観客を実現できたから。


2021年のもう一つの戦い、感染症と人が集まるイベントとしてのプロサッカーの戦い。川崎で行われた準決勝では残念ながら感染者が確認されて濃厚接触者が出てしまった。興行として他業種、各種イベントのためにもクラスターを出さないように、声を出さずに応援し、ノンアルコールで我慢です。拍手するか、旗を振るしか出来ないけれども、それでも5万7千人を集めて開催することが出来た。スポーツイベント復活に向けた大切な取り組み。この面でも勝利を目指して、現地に行った人には自重が求められます。大分からも久々の大移動で多くのサポーターが移動。感染対策は継続して頑張りましょう。



両チームゴール裏ではコレオグラフィ。素晴らしかった。2つ目の星を獲りたかった。このコレオグラフィを準備する労力はどんなものだろうか。どれだけ大変だろうか。サポーターが無償ボランティアで天皇杯の価値を高める取り組みをしてくれる訳です。JFAの田嶋会長のためじゃなく、チームのためです。JFAは天皇杯決勝のチケットをスポンサー向けに無駄に使い過ぎだと思うんですよ。何に使っているのか謎ですが、変な割り当てする癖に使いこなせない。メインスタンドの良い席に空席が目立つんです。毎年感じるのですが、もっと一般サポーター向けに振り分けてくれても良いのではなかろうか。謎の空席は良い席ほど多い。JFAの営業活動、この夢しかない空間を売り物に出来ておらず、そこだけが残念。

先発メンバーは前節を引き継ぎ。怪我で不安視されていたペレイラも井上健太も元気そうであった。ベンチには刀根が戻る。この決勝のベンチに弓場が入れた。若くしてこの場を経験出来たことは意味がある。次世代に繋いでいこう。


対する浦和。大分トリニータが生み出した日本代表GK西川が先発。最後の最後に立ちはだかる強敵。強敵と書いて「とも」と読むやつです。カウンターで厄介なユンカー&小泉。川崎よりスピードがある前線の印象であった。サイドバックの酒井宏樹はイメージが変わった。全般的にパフォーマンスの低さが目立っており本調子ではなかったのか、代表戦とかもっとクオリティが高かったイメージなんだけどJリーグに馴染んでしまったのか何なのか。楽しみにしていただけに拍子抜けではありました。



試合はもう、面白くなくても良かったんですよ。トーナメントの決勝なんてね、バンバンボール蹴って堅い試合運びしてなんぼじゃないですか。ワールドカップだって何だってそういうもんだと思っているので、試合内容に期待はしていませんでした。結果だけを求めていた。しかし、予想に反してクオリティの高いポジショニングの応酬から開始。結果だけ残せれば良い一発勝負にしては両チームのこだわりが出た試合になった。そんな中でも特に浦和のスピードには手を焼いた。川崎戦と同じ4-3-3的な、4-4-2のダイヤモンド戦術を継続したトリニータ。技の川崎、スピードの浦和。同じ対策で合っていたのか。結果論として、浦和に対しては3-4-2-1の守備時5枚でスペースを埋めた方が守り易かったんじゃなかったのか。なるべく0-0の状態を長引かせたかったはずのゲームプランに対して、7分で先制を許してしまった。それでも1点差を継続できたのでアプローチとしては間違っていなかったとは思う。もしもを考えるなら試合の入りはどちらであるべきだったのか、敢えて書くならそれくらいでしょうか。試合の入り、カマせなかった。


後半はボールを握って盛り返すことが出来た。前線に人を割くことが出来るようになったけれども、よりリスクを取った印象で、ユンカーのカウンターをペレイラとエンリケ、高木がギリギリのところで抑えてくれたからこそ攻撃が成り立っていた。コーナーキックがいちいち惜しく、西川周作の秀逸なパンチングがなければあわよくばの場面は作れていた。浦和の守備陣が破たんすることが無いまま、残り時間が少なくなっていった。リカルド・ロドリゲス監督が逃げ切りで送り出したのが宇賀神、槙野と立て続けに投入。長沢を投入してパワープレーに移行していたピッチの中で、守備の強度を増そうとしていたはず。そんな中得たFKで下田・高木の来季の契約更新をしたコンビが仕掛ける。



この試合、再三最終ラインに落ちて後方から試合を組み立てた下田北斗。パワープレーでも左の最終ラインから組み立て、前線へのボール供給元となっていた。FKを蹴ろうと見せかけてダッシュ、GK高木が変わりにFKでパスを下田に供給して左サイドの深い位置まで移動するトリックプレー。右足で上げた下田にクロスに飛び込んだのはフリーになっていた長沢、エンリケ、ペレイラ。守備要員槙野どこに行った。




クロスはペレイラのヘディングシュートに繋がり、後半アディショナルタイムに遂に西川の牙城を破ることに成功。ゴール裏は無言のお祭り騒ぎ。川崎戦同様、しつこくパワープレーで追いつくことが出来た。槙野を投入して試合のクロージングに失敗した浦和の采配ミスにしか見えなかったので困惑したというのが正直なところ。下田のセンタリングもペレイラのヘディングも素晴らしかった。


その後、槙野が勝ち越しのゴールに絡んだので更に困惑。最後の10分は不思議なジェットコースター。同点後に、延長戦に入るよりもリスクを取ることを決めたのは西川周作だったらしい。ヒーローインタビューで槙野が語っていたけれども、槙野を前線に上げた判断、それが勝ち越しを生んでしまった。強い運とリスクをとった行動、ダイレクトでシュートを打てた技術とヘディングの技術。


トリニータの延長戦への道は奪われてしまった。このままタイムアップ。残念ながら天皇杯に一瞬だけ手がかかった気がしたものの最後は槙野に持って行かれてしまった。意地は見せられたものの、届かなかった。国立一敗。



試合後、円陣となった時間が長かった。片野坂体制最後の試合。次の試合はもう無い。それでも監督が中心となってレビューが行われた。これは率直に言って驚きであった。最後の試合、お疲れ様でしたで終わって良かったはず。最後の最後まで選手の、クラブの次のことを考え、実行させるマネジメントをやり通した監督であった。
毎試合ロッカーでこういう雰囲気だったのかなと、表彰式でピッチ上で行わざるを得なかった最後に今までの積み重ねが想像できた。もしも天皇杯で優勝していたら次の監督としたらたまったもんじゃなかったろうけれども、松本怜が夢を見たACL出場はならず、普通のJ2を普通に戦うチームとなります。ルヴァンカップには出れるけれども。




最初のタイトルから13年を経て、J3を経由し、決勝の場所に戻れたこと、失敗も沢山あったかもしれない、それでもそれを糧に大分トリニータは何度も這い上がって来た。諦めずに応援をすると必ず夢を見せてくれた。悔しい結果だけれども、それでも大分トリニータは全ての悔しさを次に繋げて来たクラブである。だから下を向く必要は無い。ただのグッドルーザーではない、未来に勝利者となるためにこの試合からまたスタートです。そうやってこの場まで戻ってこれたのだから。準優勝、賞金5000万円。得たものの方が大きい。また少しずつ、前進して行きましょう。まずはまたJ1に戻れるように。




今シーズン、全試合レビューにお付き合い頂きましてありがとうございました。片野坂監督、コーチ、スタッフ、選手、サポーターの皆さん本当にお疲れ様でした。苦しいシーズンでした。それでも夢の舞台に連れて行ってくれてありがとう。また来年、J2から立ち上がりましょう。町田、下田、高木と背骨となる選手は残ってくれました。ちなみに2008年から始めたこのブログ、次にタイトルを獲るまで止めないと意地だけで続けてきましたが最大のチャンスを失って継続せねばなりません。あぁ最終回にしたかった。また来年もよろしくどうぞ。今年1年、ありがとうございました。






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